酒癖の悪い上司への対処法|怒鳴る・忘れる行動と脳の関係

酒癖の悪い上司への対応を考える日本人会社員と、記録・相談で自分を守るという見出し 職場の人間関係・ハラスメント
酒癖の悪い上司への対応を考える日本人会社員と、記録・相談で自分を守るという見出し

「上司が飲み会で怒鳴る」「翌日になると、昨日の発言を覚えていない」。仕事でも顔を合わせる相手だけに、酒癖の悪い上司との付き合いは負担になります。

飲酒は判断や記憶に影響しますが、怒鳴る行動だけで脳の萎縮や病気を判断することはできません。必要なのは原因を言い当てることより、被害を減らし、事実を記録して相談につなげることです。

私は20年以上のブラック企業勤務を経験し、40代で転職しました。ここでは、飲酒と脳の関係を整理したうえで、上司から自分を守る具体的な対応を紹介します。

この記事で分かること

飲酒と脳の関係/怒鳴る・忘れる行動の捉え方/飲み会や業務中の対応/相談・異動・転職を考える基準。

酒癖の悪い上司には、原因探しより安全と記録を優先する

上司の気分を読み続けると、「今日は何を言えば怒られないか」が仕事の中心になってしまいます。しかし、部下が言い方を工夫するだけで、相手の暴言を止められるとは限りません。まずは困っている場面ごとに、取れる対応を分けましょう。

困っている場面まず取る対応
飲み会で説教・暴言が続く二人きりを避け、退席できる状況を作る
翌日に「言っていない」と言われる日時・発言・同席者を残し、業務の指示は文面で確認する
仕事の方針が何度も変わる変更点・期限・優先順位を確認し、合意した内容を共有する
相談しても会社が動かない社外窓口を使い、異動や転職も含めて選択肢を増やす
暴力・脅し・体調悪化がある記録より安全確保を優先し、必要な支援を求める

上司の飲酒量を監視したり、病名を調べて本人に突きつけたりする必要はありません。「何が起きて、仕事や体調にどんな影響が出たか」を整理するほうが、相談相手にも伝わりやすくなります。

お酒で脳は萎縮する?飲酒と判断・記憶の関係

飲酒の影響と病気の診断を区別する説明を、会社員と酒・脳の象徴で表したイラスト
飲酒の影響と病気の診断を区別する説明を、会社員と酒・脳の象徴で表したイラスト

飲酒中の影響と、長期の多量飲酒による影響を分ける

米国の国立アルコール乱用・依存症研究所(NIAAA)は、アルコールが脳の情報伝達を妨げ、記憶や判断などの働きに影響すると説明しています。また、長期間の多量飲酒では、神経細胞などに変化が生じることがあります。

ただし、飲酒中の一時的な変化と、長期的な脳の構造の変化は同じではありません。酒の席で言葉が荒くなったという事実だけで、「前頭葉が壊れている」と説明するのは飛躍です。

出典:NIAAA「Alcohol and the Brain: An Overview」

脳の容積に関する研究は、個人の診断には使えない

2022年に公表された研究では、UK Biobankの中高年36,678人のデータを分析し、飲酒量と脳の灰白質・白質の容積などとの負の関連が報告されました。飲酒と脳の健康の関係を考えるうえで、重要な研究です。

一方で、この研究は観察研究です。飲酒が変化を引き起こしたという因果関係を、この結果だけで確定することはできません。まして、職場での暴言や指示変更から、特定の上司の脳の状態を推定できるものではありません。

出典:Davietら(2022)「Associations between alcohol consumption and gray and white matter volumes in the UK Biobank」

年齢や酒好きというだけで決めつけない

「50代だから怒鳴る」「酒好きだから認知症」といった判断はできません。健康状態の評価には医療的な確認が必要です。職場の対応は、実際の言動と被害を基準に考えましょう。

「覚えていない」と言われても、被害が消えるわけではない

大量の飲酒などによって、飲酒中の出来事が記憶に残らない「ブラックアウト」が起こることがあります。NIAAAは、記憶を長期保存する過程が一時的に妨げられる現象として説明しています。

それでも、翌日に発言を否定された理由がブラックアウトなのか、単なる忘れや責任回避なのかは、部下には分かりません。言った本人が覚えているかどうかと、言われた側が困った事実は分けて扱いましょう。

出典:NIAAA「Interrupted Memories: Alcohol-Induced Blackouts」

怒鳴る・話が変わる上司を、病気と決めつけない

業務上の指示が変わる背景には、顧客事情や社内方針の変更、説明不足などもあります。変更自体が問題とは限りません。困るのは、理由を説明せず、以前の指示に従った部下を責めるような対応です。

確認できる事実避けたい決めつけ仕事上の確認
会議のたびに方針が変わる脳が萎縮している変更理由と最新の方針を確認する
以前の指示を否定する記憶障害に違いないメール・議事メモと照合する
人前で大声で責める病気だから仕方がない発言と影響を残し、相談する
飲み会で人格を否定する酒を飲む人はみんなこうなる退席・参加方法の見直しを考える

コルサコフ症候群など、記憶に影響する疾患はありますが、職場の「言った・言わない」だけで判断はできません。病名を相手への批判に使うと、確認すべき業務の問題まで曖昧になります。

指示の変更に気づいたら、相手の記憶を問い詰めるより、現在の合意を取り直します。確認しても責任を押しつけられるなら、その経緯も記録に残してください。

指示が変わったときの確認文例

「本日の打ち合わせを受け、A案からB案へ変更する認識です。納期は金曜日のままでよいでしょうか。変更に伴い、Cの作業は来週へ回す予定です。認識が異なる場合はご連絡ください。」
※業務で使うための文例であり、筆者の実際の会話ではありません。

飲み会の暴言もパワハラになる?判断のポイント

厚生労働省は、職場のパワーハラスメントを、次の3要素をすべて満たす言動と整理しています。上司が怒ったかどうかだけではなく、関係性・言動の範囲・働く環境への影響を見ます。

  1. 抵抗・拒否しにくい関係を背景にしている
  2. 業務に必要な指示や指導として、許容される範囲を超えている
  3. その言動によって、働く環境が害されている

適正な業務指導はパワハラに当たりません。一方、人格否定や人前での執拗な叱責などは、該当し得ます。具体的な言葉、経緯、頻度などを整理して相談しましょう。

出典:厚生労働省「あかるい職場応援団:パワーハラスメントとは」

勤務時間外の懇親会でも、実質的に職務の延長と考えられる場は「職場」に該当する場合があります。業務との関係、参加者、参加の強制性などによって個別に判断されるため、「酒の席だから対象外」とは限りません。

出典:厚生労働省「あかるい職場応援団:よくある質問」

ほかのハラスメントとの違いを確認したい場合は、ハラスメントの種類一覧表と意味・対策も参考になります。

酒癖の悪い上司から身を守る4つの対処法

1.酔っている場では議論を長引かせず、距離を取る

酒の席で説教が始まったとき、正論で理解させようと長く付き合うほど負担が増える場合があります。可能であれば同僚のいる場所へ移動し、二次会への参加や二人きりになる状況を避けましょう。

断る理由は、実際の予定や事情を短く伝えれば十分です。断ったことで評価を下げる、執拗に参加を迫るといったことがあれば、その対応も記録します。

飲み会を断る・退席する文例

「今回は参加を見送ります。仕事の件は明日、勤務時間内に確認させてください。」
「本日はここで失礼します。必要な確認は明日、改めて対応します。」
※相手を説得し続けるためではなく、境界を短く伝える文例です。

暴力を振るう、出口をふさぐなど身の危険がある場合は、言い方の工夫よりその場を離れることを優先してください。周囲や店員に助けを求め、緊急時は110番に連絡します。

2.記録は「感想」と「事実」を分けて残す

日時・発言・影響の3項目を示し、職場の出来事をノートに記録する日本人会社員
日時・発言・影響の3項目を示し、職場の出来事をノートに記録する日本人会社員

「ひどい上司だった」だけでは、相談先が状況を把握しにくくなります。出来事の直後に、自分が見聞きした内容を具体的に残してください。発言を正確に思い出せない部分は、要旨であることを明記します。

記録項目残しておきたい内容
日時・場所いつ、どこで起きたか。飲み会か業務中か
発言・行動実際の言葉、声を荒らげた状況、具体的な指示
同席者・資料その場にいた人、メールやチャットの所在
業務への影響作業のやり直し、確認できない状態、納期への影響
体調・その後の対応眠れないなどの変化、相談日、会社の回答

飲酒量を見ていないなら「大量に飲んでいた」と断定せず、確認した範囲を記します。自分の感情も大切ですが、事実欄とは分けておくと読み返しやすくなります。

記録の保存・共有は必要な範囲で

相談用の記録を残す際も、顧客情報や営業秘密をまとめて持ち出さないでください。録音の可否・方法・扱いに迷う場合は、相談窓口や弁護士に確認しましょう。記録をSNSなどで公開することは避け、相談先への必要な共有にとどめます。

3.相談では、困りごとと希望する対応を伝える

女性の相談担当者に話す日本人会社員と、相談・休養・選択肢を示す見出し
女性の相談担当者に話す日本人会社員と、相談・休養・選択肢を示す見出し

社内窓口や人事へ相談するときは、病名や性格の評価より、出来事と希望する対応を伝えます。「一対一の面談を避けたい」「業務指示を文面にしてほしい」など、日々の負担を減らす要望も整理してください。

相談前には、誰まで内容が共有されるか、本人への聞き取りはどう進むか、当面の業務をどうするかを確認すると、不安を整理できます。回答があれば、担当者名や次回の連絡予定も残しておきましょう。

相談時に伝える文例

「懇親会で人格を否定する発言があり、その後も業務中の叱責が続いています。日時と内容を記録しています。当面は一対一の対応を避けたいので、担当業務と相談内容の共有範囲について相談したいです。」
※状況に合わせて事実だけに置き換えてください。

社内で相談しにくい場合は、厚生労働省の総合労働相談コーナーが選択肢です。パワハラなどの労働問題を対象に、無料・予約不要で面談や電話の相談を受けています。相談と、その後の助言・指導やあっせんなどの手続きは分けて確認しましょう。

窓口の対応時間は、公式案内で確認してください。最初から法的な結論を出せなくても、「どのように整理して相談すればよいか」を聞くことから始められます。

4.不調が続くなら、休養・異動・転職も考える

眠れない、食べられない、出勤を考えると強い不安が出るなどの不調があるなら、上司の原因分析より自分の健康を優先してください。産業医や医療機関への相談、休むことも選択肢です。

改善するまで働き続ける前提にせず、異動の可否、休暇・休職の制度、家計、今後の働き方を確認しましょう。転職を考える場合も、すぐ退職を決める必要はなく、職務経歴や求人を整理するところから始められます。

退職を伝えること自体が怖い場合は、ブラック企業を辞めたい人の準備と退職の伝え方で、確認事項をまとめています。

ブラック企業勤務の経験から、上司だけでなく会社の対応を見る

私が以前勤めていたブラック企業でも、飲み会で説教が続き、翌日には何事もなかったように振る舞う上司や、会議ごとに話が変わる場面を見てきました。仕事上の関係が続く相手なので、その場が終われば気持ちを切り替えられる、とは限りません。

ただ、その上司に医学的な問題があったのかは分かりません。私の経験から伝えられるのは、そうした言動が職場に存在したことと、社員が働く環境として捉える必要があるということです。

私は40代で転職しました。今考えると、相手の性格や健康状態を推測し続けるより、自分が働き続けられる環境かどうかに目を向けることが大切です。

会社の反応判断するときの確認点
相談後に事実を確認する担当者・対応内容・確認時期が示されるか
「酒の席だから」で終わらせる被害を確認せず、本人の我慢に任せていないか
役員や古参社員だけ例外にする立場によって暴言への対応が変わっていないか
相談後に本人の負担が増える配置・評価・業務量の変化と、その説明を記録する

これは医学的な診断や会社の危険度を採点する表ではありません。会社が問題を扱う姿勢を見るための確認点です。社員が黙って耐えるだけで、同じことが繰り返されるなら、社内の対応だけに期待しない準備が必要です。

職場全体の問題は、パワハラ・モラハラが当たり前になる職場の構造と対策、会社を見極める視点はヤバい会社の特徴15選と対処法でも紹介しています。

酒癖の悪い上司に関するよくある質問

謝罪されたら、記録を消したほうがよいですか?

すぐ消す必要はありません。謝罪の日時と内容、その後に再発がないかを追記しましょう。「許すかどうか」と「何があったかを記録しておくこと」は別の判断です。

録音がないと、相談しても意味がありませんか?

録音の有無だけで相談を諦める必要はありません。出来事のメモ、メール、同席者の情報など、今ある材料から整理してください。十分な証拠があるかを一人で決める前に、窓口へ相談しましょう。

同僚として見ていただけの場合は、何ができますか?

本人の意向を確認し、見聞きした事実を残すことや相談への同行を提案できます。本人の了解なく被害の詳細を広めたり、本人に代わって上司と対決したりすることは避けましょう。

転職面接で、上司の飲酒問題を詳しく話すべきですか?

相手の病気や私生活を推測して説明する必要はありません。業務上の困りごと、改善を求めた経緯があるならその事実、次の職場で実現したい働き方に絞ると伝わりやすくなります。

まとめ|上司の原因を言い当てるより、自分を守る行動を

飲酒は脳の働きに影響しますが、酒癖の悪い上司の言動を、それだけで説明することはできません。怒鳴る、人格を否定する、指示変更の責任を押しつけるといった問題は、事実と影響を整理して対応しましょう。

  1. まず、身の危険や体調の変化がないか確認する
  2. 次に、出来事と業務上の指示を記録し、相談先を確保する
  3. 改善が見込めなければ、異動・休養・転職の準備を進める

無理に上司を診断したり、酒の席で説得したりする必要はありません。仕事を続けるためにも、今の職場から離れるためにも、自分の健康と選択肢を守ることから始めてください。

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