「自分の年収は、同年代と比べて低いのだろうか」。30代・40代・50代になると、家族の生活費や教育費、これからの働き方まで気になり、平均年収を調べたくなることがあります。
年収の相場を見るなら、平均と中央値を同じ調査の中で比較することが大切です。平均は全体の水準、中央値は年収順に並べた中央の位置を示します。どちらか一方で、自分の給料の良し悪しは決められません。この記事では年代別の数字と、比較するときの注意点、40代からの見直し方を整理します。
先に押さえたいこと
年収は原則として税金・社会保険料を引く前の額面で比べます。「個人の給与」と「家族全体の所得」、「民間企業の給与所得者」と「転職サービスに登録した正社員」は対象が違います。数字の大きさより先に、何を集計したデータかを確認しましょう。
私は20年以上の会社員・BtoB営業経験と、20年以上のブラック企業勤務経験があり、40代で転職しました。家計と働き方を考える立場から、統計を自分の価値の採点に使うのではなく、選択肢を整理する材料として使ってほしいと考えています。
30代・40代・50代の年収の平均と中央値
年代別の平均と中央値を比較するため、ここではdoda「平均年収ランキング2025」のデータを使います。対象は2024年9月~2025年8月に登録した20~65歳の正社員、約60万人です。全国の会社員全員を無作為に調べた統計ではありません。
| 年代 | 平均年収 | 年収中央値 |
|---|---|---|
| 30代 | 454万円 | 410万円 |
| 40代 | 517万円 | 450万円 |
| 50代以上 | 601万円 | 500万円 |
出典:doda「平均年収ランキング(2025年)」・年収中央値の情報。提供元:転職サービス「doda」。表の「50代以上」は調査対象の50~65歳を含み、50代だけの数字ではありません。
男性・女性の中央値も、比較条件をそろえて見る
| 年代 | 男性の中央値 | 女性の中央値 |
|---|---|---|
| 30代 | 480万円 | 360万円 |
| 40代 | 550万円 | 380万円 |
| 50代以上 | 600万円 | 380万円 |
出典は上の表と同じdodaの2025年版です。たとえば40代では、男女全体の中央値と男性の中央値が異なります。「40代の中央値」という言葉だけで判断せず、どの集団の数字かまで見てください。
男女差があっても、この表だけで同じ仕事に対する賃金差や、その原因まで断定することはできません。職種、役職、勤務時間などの条件がそろっていないためです。また、年齢別の比較は異なる人たちの比較であり、自分の給料が同じように増える保証ではありません。
中央値を「合格ライン」にしない
同年代の中央値より低いから能力が低い、高いから家計に余裕がある、とは限りません。相場を確認した後は、職種・地域・仕事内容・勤務時間が近い条件で比較し直すことが必要です。
平均年収と中央値の違いを、具体例で理解する

平均は、全員の年収を合計して人数で割った数字です。中央値は、年収を小さい順に並べたときの中央の値です。人数が偶数なら、中央に並ぶ2つの値の平均を使います。
5人の年収で考える例
説明用の架空データを、300万円・350万円・400万円・450万円・1,500万円とします。平均は合計3,000万円÷5人で600万円、中央値は中央の400万円です。実際の職場を表した数字ではありません。
この例では、平均600万円に届くのは5人のうち1人だけです。高い年収の人がいると平均が引き上げられるため、平均以下でも特別に珍しいとは限りません。ただし、すべての集団で平均が中央値より高くなるわけではなく、分布によって関係は変わります。
| 指標 | 分かること | 読むときの注意 |
|---|---|---|
| 平均 | 集団全体の年収水準 | 極端に高い・低い値の影響を受ける |
| 中央値 | 年収順に並べた中央の位置 | 年収のばらつきや生活費までは分からない |
| 最頻値・最多の年収帯 | 最も多い値や区間 | 中央値とは別の指標 |
中央値は「一番多くの人がもらう年収」と同じではありません。中央の位置が同じでも、年収の幅が狭い職場と広い職場では状況が違います。平均と中央値を合わせて見たうえで、年収帯ごとの人数や自分に近い職種の情報を補うと、相場をつかみやすくなります。
国税庁の平均年収とdodaの数字が違う理由
国税庁の最新公表資料である「令和7年分(2025年分)民間給与実態統計調査」では、1年を通じて勤務した給与所得者の平均給与は487万円です。主な平均給与を整理すると、次のようになります。
| 区分 | 平均給与 |
|---|---|
| 全体 | 487万円 |
| 男性 | 597万円 |
| 女性 | 342万円 |
| 正社員・正職員 | 559万円 |
| 正社員・正職員以外 | 210万円 |
出典:国税庁「令和7年分 民間給与実態統計調査」。平均給与は給料・手当と賞与を合わせた年間の支給額です。民間事業所の給与を対象とするため、公務員を含む全就業者の平均ではありません。
国税庁とdodaでは、調査対象の選び方や年齢構成、雇用形態の範囲が違います。国税庁の全体の平均給与とdodaの年代別中央値を引き算して、「これだけ年収格差がある」と説明するのは適切ではありません。差を確かめるなら、同じ調査・同じ対象・同じ年齢区分を使います。
世帯所得の中央値を、自分一人の年収と比べない
厚生労働省の「2025年 国民生活基礎調査」では、全世帯の所得中央値は451万円、平均所得は575万2千円です。ただし、これは2024年の世帯全体の所得で、会社員一人の給与年収ではありません。給与以外の年金なども含むため、用途を分けて読みます。
出典:厚生労働省「2025年 国民生活基礎調査の概況・各種世帯の所得等の状況」。調査年と所得の対象年が1年ずれる点にも注意してください。
家計を考えるなら家族全体の収支、仕事の待遇を考えるなら自分の給与、と目的を分けましょう。同じ世帯収入でも、家族の人数、住宅費、借入金で生活の余裕は変わります。貯蓄の比較は、40代の貯金の中央値を30代・50代と世帯別に比較した記事でも整理しています。
自分の年収が低いか判断する5つの確認項目

全国平均を見て焦る前に、手元の資料と比較条件をそろえましょう。「世間より低い気がする」という不安が、何を確認すればよいかという具体的な課題に変わります。
- 額面を確認する:源泉徴収票の「支払金額」を基本に、賞与も含めて年間給与を把握する。
- 近い仕事で比べる:同じ業界・職種・地域・雇用形態を優先し、役職や担当範囲も確認する。
- 労働時間を確認する:残業代込みの年収と、基本給・賞与中心の年収を区別する。
- 続く収入を確認する:一時的な賞与や歩合を分け、基本給と昇給・昇格の条件を見る。
- 家計との関係を見る:手取り、固定費、年払いの支出を並べ、年間で残るお金を確かめる。
給与年収の比較で使う「支払金額」と、税金の計算で使う「給与所得控除後の金額」は別です。給与所得は給与収入から給与所得控除を差し引いて求めるため、その欄を年収として比較するとずれが生じます。参考:国税庁「給与所得控除」。
年収だけでなく、仕事に使う時間も比べる
比較のための単純計算
A社が年収500万円・年間労働時間2,000時間、B社が550万円・2,500時間なら、年収÷労働時間はA社2,500円、B社2,200円です。いずれも説明用の架空例で、通勤時間・福利厚生などは含めていません。
年収が高い会社でも、長時間労働が増えると生活に使える時間は減ります。この割り算は法定の時給や残業代を計算する方法ではなく、働き方を比べる補助です。年収の差と時間の差を並べると、自分が重視したい条件を整理しやすくなります。
求人票の年収レンジも、その上限が自分に適用されるとは限りません。基本給、固定残業代、賞与の前提、歩合の割合を確認しましょう。曖昧な募集表現の読み方は、求人票の地雷ワード16選と面接での確認方法が参考になります。
40代から年収と働き方を見直すには
私が家計とキャリアを別々に考えたい理由
私の場合、子どもの塾代や習い事代が重なると、毎月の家計が気になることがあります。同年代の年収を知りたくなる背景には、他人に勝ちたいという気持ちより、「家族の生活をこの先も支えられるだろうか」という不安があります。
仕事では20年以上BtoB営業を経験し、ブラック企業で働いた期間も合計20年以上あります。その後、40代で転職し、現在は転職先で働いています。ただし、私自身の転職経験だけで、誰でも年収が上がるとはいえません。転職先での評価や担当業務によって条件は変わるため、経験談と収入の見込みは分けて考えたいと思います。
その経験を踏まえて、今の私は、収入の金額と長く続けられる働き方を一緒に確認することが大切だと考えています。統計を見て終わるより、今の仕事で得られる条件と、社外にある選択肢を整理するほうが、次の判断につながります。
経験を棚卸しし、条件をそろえて求人を見る
営業職なら「営業経験20年」だけでなく、扱った商材、顧客の業界、担当した地域、提案・見積もり・納品調整の範囲などを整理できます。管理職経験がなくても、顧客対応や業務改善の専門性を説明する材料はあります。実績を書く際は、確認できる数字だけを使いましょう。
| 今の状況 | まず確かめること |
|---|---|
| 昇給がほとんどない | 基本給の推移、評価制度、昇格条件 |
| 残業代で年収を維持している | 残業を減らした場合の収入と家計 |
| 他社で通用するか不安 | 近い職種の求人条件と自分の経験 |
| 今すぐ動く余裕がない | 職務経歴の整理と生活費の把握 |
まずは在職中に求人を確認するだけでも構いません。年収だけでなく、仕事内容、勤務地、残業、休日を並べ、希望条件に優先順位を付けてください。迷いが大きい場合は、40代の将来不安と転職の判断基準も合わせて整理できます。
同じ業界の経験を生かす場合は、待遇と合わせて契約上の条件も確認が必要です。応募前に読む内容として、同業他社への転職で確認すべき義務と注意点をまとめています。
退職を急ぐ前に条件を具体化する
提示年収の内訳、賞与の支給条件、残業時間、試用期間中の待遇を確認しましょう。収入が途切れる期間の生活費も見積もり、比較できる情報がそろってから判断します。平均以下という理由だけで、急いで退職を決める必要はありません。
年収の平均・中央値についてのよくある質問
年の途中で転職した場合、何と比較すればよいですか?
その年に実際にもらった給与と、新しい職場で1年間働いた場合の見込みは分けてください。無収入期間や賞与の減額がある年は、前年との単純比較だけでは待遇の変化を判断しにくくなります。
年収の中央値を12で割れば、毎月の手取りになりますか?
なりません。年間給与には賞与が含まれることがあり、手取りには税金や社会保険料の控除も関係します。月々の家計には、給与明細の実際の振込額と賞与の受取額を使ってください。
夫婦それぞれの中央値を足せば、世帯の中央値になりますか?
なりません。別々の集団の中央値を合計しても、世帯ごとの所得を並べた中央の値にはなりません。家族の収入を調べたい場合は、世帯を対象にしたデータを使います。
年収の平均との差を、そのまま昇給交渉の希望額にしてよいですか?
全国平均との差だけでは、会社が判断できる根拠として弱い場合があります。担当範囲、成果、役職に求められる責任、評価制度を整理し、何を満たせば待遇が変わるのか確認するほうが建設的です。
まとめ:相場を知ったら、自分の条件で比較し直す
年収の平均と中央値は、自分の待遇を考える出発点です。同じ調査内の数字を比べ、個人の給与と世帯所得を分けることで、見かけの差に振り回されにくくなります。
- まず確認:源泉徴収票の支払金額と、比較する統計の対象・年をそろえる。
- 次にする:職種・地域・労働時間が近い条件で、基本給と年間の収支を見直す。
- 無理にしなくてよい:平均以下という理由だけで落ち込んだり、退職を急いだりすること。
家族を支えながら働く会社員にとって大切なのは、数字で順位を付けることより、生活を続けられる条件を確かめることです。今日できる一歩として、昨年の年間給与と直近の給与明細を並べるところから始めてみてください。



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