BtoBの中間業者はなぜ忙しい?薄利多忙になる流通構造を解説

BtoBの中間業者はなぜ忙しいかを薄利多忙の流通構造から解説 営業職
BtoBの中間業者はなぜ忙しいかを薄利多忙の流通構造から解説

「問屋や代理店は、メーカーから仕入れた商品を販売店へ流しているだけでは?」

BtoBの商流を外から見ると、そう感じる人もいるかもしれません。しかし、20年以上BtoB営業を経験してきた私の実感は違います。

中間業者がつないでいるのは、商品だけではありません。商品情報、価格、在庫、物流、納期、伝票、請求、問い合わせ、そして取引先同士の信用までつないでいます。

中間業者が忙しくなる核心は、「商品が1回売れる=仕事が1回発生する」ではないことです。1件の受注が、見積・発注・納期回答・入荷・検品・納品・請求など、複数の仕事に分かれます。私はこの状態を、薄利多売ではなく「薄利多忙」と表現しています。

この記事では、問屋・卸・商社・代理店・一次店・二次店などを広く「中間業者」と呼び、なぜ多忙になりやすいのかを実務の流れから解説します。

BtoBの中間業者は何をつないでいるのか

総務省・経済産業省の「令和3年経済センサス‐活動調査」では、卸売業を、小売業者や他の卸売業者、産業用の使用者などへ商品を販売する事業所として整理しています。代理や仲立ちを行う事業所も卸売業の範囲に含まれます。
詳しくは「BtoBとはどんな業種?仕事内容と企業間取引の仕組みを解説」こちらを参照してください。

ただし、実際の取引で担う役割は「商品を売る」だけではありません。

つなぐもの中間業者で発生する主な仕事
商品品ぞろえ、選定、仕入れ、保管、出荷
情報商品仕様、変更情報、終売情報、代替品の案内
価格仕入価格、販売価格、見積、価格改定の反映
在庫在庫確認、引当、欠品対応、適正在庫の判断
物流入荷、検品、仕分け、梱包、配送、返品
納期メーカー確認、得意先への回答、変更時の再調整
伝票・請求指定伝票、売上・仕入処理、請求、入金確認
問い合わせ商品確認、不具合、返品、納品状況の確認
信用掛取引、与信、代金回収、継続取引の維持

中間業者が間に入ることで、販売店は多数のメーカーと一社ずつ口座を開き、発注し、請求を処理する負担を減らせます。メーカー側も、多数の小口取引先へ個別対応する代わりに、中間業者を通じて販路を広げられます。

つまり、中間業者は取引を増やしているだけではなく、取引先双方の細かな仕事を引き受け、まとめる役割も担っているのです。

メーカーからユーザーまでの基本商流

本記事では、次の流れを基本モデルとして考えます。

メーカー → 一次店 → 二次店 → 販売店 → 消費者・ユーザー

メーカーから一次店、二次店、販売店、消費者・ユーザーへつながるBtoBの基本商流
商品・業界・契約によって異なる、中間流通の基本的な商流モデル

商品・業界・契約によって異なる、中間流通の基本的な商流モデル

一次店はメーカーと直接取引し、二次店は一次店から仕入れる形が一般的な説明です。ただし、これはすべての業界に共通する固定ルールではありません。

  • メーカーから販売店へ直接流れる
  • 一次店だけを経由する
  • 二次店、三次店まで存在する
  • 商流には卸が入るが、商品はメーカーから得意先へ直送される
  • 代理店は在庫を持たず、契約や受注の仲介を中心に行う

このように、商品の流れである「物流」と、契約・所有権・代金・情報の流れである「商流」が一致しない場合もあります。農林水産省の食品流通構造調査でも、商品は産地から取引先へ直接流れ、商流のみ卸売市場内の業者を経由する取引が示されています。

「一次店」「二次店」という呼び方や役割は、業界・商品・契約によって変わります。中間業者が必ず2社入る、あるいは卸業者は1社しか入らない、と決めつけないことが大切です。

商品1個の販売でも仕事は1回で終わらない

商品が1個売れたとき、外から見えるのは「注文を受けて届ける」という流れです。しかし、その裏側では次のような処理が発生します。

BtoBで商品1個を販売するときに発生する見積から入金管理までの14工程
見積から入金管理まで、一次店・二次店・販売店で重なって発生する処理

見積から入金管理まで、一次店・二次店・販売店で重なって発生する処理

取引段階主な処理
受注前見積、商品選定、在庫確認、価格確認
受注時受注入力、発注、納期確認、納期回答
入出荷入荷、検品、仕入処理、保管、出荷、納品
売上後売上計上、請求、入金確認、差額・返品対応

一次店、二次店、販売店を経由する場合、それぞれの会社で受注・発注・売上・仕入・請求などの処理が発生します。1件の注文が商流の各段階で複製されるため、取引件数だけを見ても実際の仕事量は分かりません。

さらに、納期変更、欠品、数量変更、分納、返品が起きれば、一度回答した内容をもう一度確認し直すことになります。1回の変更が複数社へ連鎖するのも、中間業者が忙しくなる理由です。

私の営業経験でも、売上金額は小さいのに確認回数が多い案件がありました。商品1点の注文でも、品番の確認、メーカーへの在庫照会、得意先への納期回答、指定伝票の作成、納品時間の調整まで必要なら、受注金額に対して仕事量が大きくなります。

多メーカー・多品種が中間業者の仕事量を増やす

卸・問屋の強みは、複数メーカーの商品をまとめて扱えることです。販売店から見れば、メーカー10社へ個別に発注する代わりに、卸1社へまとめて注文できます。

販売店から見た価値卸・問屋で増える管理
発注先を集約できる10社分の発注方法を管理する
請求先をまとめられる10社分の仕入・請求を照合する
商品を比較しやすい多数の商品情報と商品コードを維持する
納期の窓口を一本化できる各社へ在庫・納期を確認して回答をまとめる
配送をまとめられる場合がある入荷日や倉庫、配送条件を調整する

品ぞろえの多さは、提案力と利便性につながります。一方で、取り扱うメーカーと商品が増えるほど、価格表、商品コード、廃番、後継品、送料、返品条件などの管理対象も増えます。

売れ筋だけを扱えば管理は楽になるかもしれません。しかし、地域の販売店やユーザーから「これも一緒に欲しい」と頼まれる商品に応えることが、中間業者の価値になる場面もあります。

多品種であること自体が悪いのではありません。販売店側の調達負担を減らし、メーカー側の販路を広げる大きな強みです。問題は、取扱点数の増加に対して商品情報や受発注の仕組みが追いつかないとき、仕事量だけが膨らみやすいことです。

仕入先と得意先の異なるルールをつなぐ

多忙さをさらに増やすのが、取引先ごとに異なる業務ルールです。

私が経験してきた現場では、メーカーAはWeb、メーカーBはEDI、メーカーCはメール、メーカーDはFAX、メーカーEはExcelというように、発注方法が統一されていないことがありました。

複数の内資系・外資系メーカーのWeb、EDI、メール、FAX、Excel発注を中間業者がまとめる図
仕入先ごとに異なる発注方式と、得意先独自の納品・伝票ルールを中間業者が接続する

仕入先ごとに異なる発注方式と、得意先独自の納品・伝票ルールを中間業者が接続する

違うのは発注方法だけではありません。

  • 商品コードと品番表記
  • 注文締め時間
  • 最低発注金額と送料条件
  • 納期回答の方法とタイミング
  • 価格改定の時期
  • 返品・キャンセル条件
  • 伝票と請求書の書式

販売先側にも、指定伝票、納品時間、指定倉庫、見積書式、発注方法、請求方法などの独自ルールがあります。

中間業者は、「仕入先のバラバラな仕組み」と「得意先のバラバラな要求」の間に入り、内容を読み替え、入力し直し、間違いがないか確認している場合があります。

ルールの違いは二重入力と確認作業を生む

自社の販売管理システムに受注を入力しても、メーカーのWebサイトやExcelへ同じ内容を再入力する必要があれば、処理は1回で終わりません。

システム連携ができていない取引では、次の負担が増えやすくなります。

  1. 得意先の注文内容を読み取る
  2. 自社の商品コードへ変換する
  3. メーカー側の商品コードへ再変換する
  4. メーカーの指定方式で発注する
  5. 回答を自社システムへ戻す
  6. 得意先の指定形式で納期を回答する

商品数が増えるほど、入力ミスや確認漏れを防ぐための照合作業も増えます。この「変換と確認」は売上として見えにくい一方、中間業者の現場を支える重要な仕事です。

内資系・外資系メーカーで供給や承認の流れが異なる

中間業者が取り扱う仕入先には、内資系メーカーと外資系メーカーの双方があります。ここでも、企業ごとの供給・承認プロセスの違いが仕事の進め方に影響します。

確認する項目あり得るパターン
出荷元国内工場、国内倉庫、海外工場・倉庫
在庫確認日本法人、国内物流会社、海外本社・工場
価格承認日本法人内で承認、海外本社を含めて承認
製品方針日本法人主体、海外本社主体、共同決定
納期への影響国内在庫、輸入日程、生産計画、輸送方法などで変動

「外資系だから納期が長い」「外資系だから承認が遅い」とは限りません。日本法人に大きな権限がある企業もあれば、国内在庫を豊富に持つ企業もあります。内資系でも海外生産や輸入部品の影響を受ける場合があります。企業・製品・在庫・物流方式・権限によって異なります。

中間業者側から見れば、内資か外資かという分類そのものよりも、「どこへ確認し、誰が承認し、どこから商品が動くのか」をメーカーごとに把握することが重要です。

地域密着型の中間業者ほど一人の担当範囲が広くなりやすい

全国規模の大手卸がある一方、特定地域を中心に営業する中小規模の卸・代理店もあります。

2021年の経済センサスでは、卸売業は全国で34万8,889事業所、従業者は385万6,785人でした。産業機械、建築材料、食品、医薬品、電気機械など多くの分類に分かれており、卸売業の裾野が広いことが分かります。

ただし、この統計だけで「地域密着型企業が多い」と断定することはできません。ここから先は、20年以上BtoB営業をしてきた私の経験としての話です。

私が接してきた中間業者には、全国一律ではなく、地域の販売店や事業者との関係を強みにする企業が多くありました。小規模な会社では、担当者が営業だけに専念せず、複数の仕事を兼ねる場面もあります。

  • 営業をしながら見積を作る
  • メーカーへ納期を確認する
  • 欠員時に納品を手伝う
  • 商品問い合わせへ回答する
  • 伝票の修正や請求内容を確認する
  • 得意先の急な依頼に対応する

地域の事情や得意先の現場を知っていることは、大手にはない強みになります。その一方で、「この人に聞けば分かる」と仕事が集中すると、営業・事務・納品・問い合わせ対応の境界が薄くなりやすいと感じます。

中間業者がいることで販売店とメーカーの負担が減る

中間業者を省けば、流通が短くなり、効率がよく見えるケースもあります。実際にメーカー直販が適している商品や取引もあります。

しかし、販売店が10社のメーカーから商品を仕入れるなら、10社分の口座、発注、納期、支払い、返品条件を管理しなければなりません。メーカーも、小口の販売先すべてに見積・受注・請求・問い合わせ対応を行う必要があります。

中間業者がまとめる機能販売店側のメリットメーカー側のメリット
品ぞろえ複数メーカーの商品を一括調達しやすい自社だけでは届きにくい販路へ広げやすい
在庫必要な数量を必要な単位で買いやすい生産・出荷ロットをまとめやすい
情報比較・代替品の相談窓口を一本化できる商品情報を市場へ伝えやすい
物流商品をまとめて受け取れる場合がある配送先や出荷回数を集約できる場合がある
信用・決済取引口座と支払先を減らせる与信・回収先を集約できる場合がある

中間業者の仕事は「右から左へ流すこと」ではなく、取引の細分化で生じる手間を集約することです。その集約を中間業者の社内で引き受けるからこそ、現場が忙しくなる面があります。

メーカーと中間業者は大変さの種類が違う

ここまで中間業者の多忙さを説明しましたが、「メーカーは楽で、中間業者だけが大変」という意味ではありません。
詳しくは「メーカーと卸売業の違いとは?利益率・仕事量・安定性を比較」こちらを参照ください。

メーカーは、研究開発、設備投資、原材料調達、製造、品質管理、生産管理、在庫、物流、営業、人材確保など、大きな負担とリスクを抱えています。製品事故や品質問題が起きたときの責任も重大です。

メーカーに多い負担中間業者に多い負担
開発・設計・設備投資多メーカー・多品種の情報管理
生産計画と品質管理仕入先ごとの発注方式への対応
原材料・部品の調達得意先ごとの納品・伝票条件への対応
製造在庫と供給責任小口受注、分納、納期調整
製品戦略と市場開拓問い合わせ、与信、請求、入金管理

メーカーは「作る責任」が重く、中間業者は「多くの異なる取引をつなぎ続ける負担」が大きい。大変さの種類が違うと考えるのが実態に近いでしょう。

薄利多売が「薄利多忙」へ変わる構造

すべての卸売業が薄利とは限りません。専門性が高い商品、独自の在庫力、技術支援、独占的な商流などによって、十分な利益を確保している企業もあります。

一方で、利益の薄い商品を多く扱い、取引量だけでなくメーカー数、品種数、事務処理、納期調整まで増えると、次の構造になりやすいと私は考えています。

薄利、多売、多メーカー、多品種、多事務処理、物流・納期調整が掛け合わさり薄利多忙になる構造
利益条件と仕事量の要因が掛け合わさる「薄利多忙」の構造

利益条件と仕事量の要因が掛け合わさる「薄利多忙」の構造

薄利 × 多売 × 多メーカー × 多品種 × 多事務処理 × 物流・納期調整 = 薄利多忙

重要なのは、売上高や受注件数だけで生産性を判断しないことです。同じ10万円の受注でも、1品を一括納品する案件と、20品を複数メーカーから取り寄せて分納する案件では仕事量が違います。

だからこそ、中間業者では「いくら売れたか」と同時に、「何回の処理、確認、配送が発生したか」を見る必要があります。

「薄利多忙」を防ぐために確認したいこと

中間業者の価値を保ちながら仕事量を抑えるには、単純に商品数や得意先を減らすのではなく、手間が増えている場所を可視化することが大切です。

1.売上だけでなく処理回数を見る

  • 受注明細数
  • 発注先数
  • 納期回答回数
  • 分納回数
  • 配送回数
  • 伝票修正回数
  • 問い合わせ件数

売上金額に表れない業務を数えると、負担が集中する商品や取引条件が見えやすくなります。

2.商品コードと取引条件を整理する

同じ商品の表記が取引先ごとに違うと、変換と照合が増えます。商品マスターにメーカー品番、自社品番、得意先品番を関連付け、送料、締め時間、返品条件も確認できるようにすると、属人化を減らしやすくなります。

3.例外対応を無料の標準業務にしない

急ぎの納品、少額商品の個別配送、特殊な伝票、頻繁な見積変更などは、すべて対応すれば顧客満足につながるとは限りません。標準条件と例外条件を分け、必要に応じて最低発注金額、送料、納品回数、締め時間を見直します。

関連記事として、値下げではなく取引条件を変える考え方は、BtoB営業の値引き交渉をチャンスに変える段階式リベート提案術でも解説しています。

システム化すればすべて解決するわけではありません。取引先がFAX、メール、Web、EDIを使い分けている場合、自社だけで統一できない部分もあります。まずは二重入力と確認作業が多い取引から、現実的に減らせる手間を探すことが重要です。

まとめ|中間業者は商品ではなく取引全体をつないでいる

BtoBの中間業者が忙しい理由は、商品を大量に売るからだけではありません。

  • 1件の受注が見積・発注・納期・物流・請求などへ分かれる
  • 一次店、二次店、販売店の各段階で処理が発生する
  • 多メーカー・多品種が強みである一方、管理対象を増やす
  • 仕入先と得意先で発注方法、コード、伝票、納品条件が異なる
  • 内資系・外資系を問わず、メーカーごとに供給・承認の流れが違う
  • 地域密着型の小規模企業では、一人が複数業務を担う場合がある

中間業者は、商品、情報、価格、在庫、物流、納期、伝票、請求、問い合わせ、信用をつないでいます。

「商品が1回売れる=仕事が1回発生する」ではありません。売上の裏で何回の確認と処理が発生しているかまで見て、初めて中間業者の仕事量が分かります。

薄利多売に、多メーカー・多品種・多事務処理・物流調整が重なる。その状態こそ、現場で起きている「薄利多忙」なのです。

FAQ

中間業者と卸売業、問屋、商社、代理店は同じですか?

完全に同じではありません。卸売業・問屋は商品を仕入れて事業者へ販売する形が中心です。商社は商品の売買に加え、情報、金融、事業投資などを担う場合があります。代理店はメーカーなどの代わりに販売・契約・取次を行う形があり、在庫を持たない場合もあります。本記事では、メーカーと販売先の間で取引をつなぐ事業者を広く「中間業者」と表現しています。

一次店と二次店の違いは何ですか?

一般には、メーカーと直接契約・取引する事業者を一次店、その一次店から仕入れたり契約したりする事業者を二次店と呼びます。ただし、名称、契約関係、在庫の有無、販売範囲は業界によって異なります。

なぜメーカーから直接買わず、卸や問屋を利用するのですか?

複数メーカーの商品をまとめて発注し、請求や問い合わせの窓口を集約できるからです。小口対応、在庫、配送、代替品提案、地域での即応などが価値になる場合もあります。一方、大口取引や特定商品ではメーカー直販が適する場合もあります。

卸売業はすべて薄利多売ですか?

いいえ。商品、業界、契約、専門性、在庫機能、サービス内容によって利益構造は異なります。本記事の「薄利多忙」は、利益が薄い取引に多品種・多事務処理・物流調整が重なった状態を表す筆者の表現です。

外資系メーカーは内資系メーカーより納期が長いですか?

一概にはいえません。国内在庫の有無、工場の場所、輸送方法、日本法人の権限、生産計画によって変わります。外資系でも国内在庫から短納期で出荷する企業があり、内資系でも海外生産や輸入部品の影響を受ける場合があります。

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