退職願と退職届の違いは?書き方と提出時期・注意点を解説

退職願と退職届の違いと、書き方・提出時期・注意点 転職・キャリア
退職願と退職届の違いと、書き方・提出時期・注意点

会社を辞めると決めても、「退職願と退職届はどちらを出すのか」「上司に受け取ってもらえなければ辞められないのか」と迷うことがあります。この記事では、2つの書類の違いから、提出時期、書き方、受け取りを拒まれた場合の対応まで整理します。

私は20年以上のブラック企業勤務を経験し、40代で転職しました。先に結論をお伝えすると、退職願は合意を求めるとき、退職届は確定した退職意思を伝えるときに使うのが一般的です。ただし、法的な扱いは書類名だけでは決まりません。

最初に押さえたい3つのポイント

  • 「願」「届」の名前だけでなく、本文と提出の経緯が大切。
  • 退職日を考える前に、雇用契約に期間の定めがあるか確認する。
  • 書類の控えと、いつ・誰に・どのように伝えたかの記録を残す。

本記事は民間企業の従業員を主な対象とした一般的な解説です。公務員・役員などは別のルールが関係します。退職日や書面の効力を会社と争っている場合は、労働相談窓口や弁護士へ個別に確認してください。

退職願と退職届の違いは「合意を求めるか、意思を通知するか」

退職願は「この日で退職させてほしい」と会社に合意を求める書類、退職届は「この日で退職する」と意思を通知する書類として使われます。まずは、一般的な使い分けを比較しましょう。

比較項目退職願退職届
主な役割退職の合意を求める退職意思を通知する
文面の例退職いたしたく、お願い申し上げます退職いたします
会社の承諾合意退職の申込みなら必要適法な辞職の通知なら不要
撤回の基本合意退職なら承諾前は原則可能辞職の通知が到達した後は、原則として会社の同意が必要
よく使う場面退職の合意を得る手続き退職意思の通知や、合意後の社内手続き

この表で大切なのは、退職届が「退職願より強い紙」という意味ではないことです。会社によっては、すでに合意した退職日を記録するため、退職届という名称の書類を提出させる場合もあります。

書類のタイトルだけで法的な扱いは決まらない

「退職届」と書いてあっても、本文が相談や承認を求める内容なら、解釈が問題になることがあります。逆に「退職願」という表題でも、文面や当事者のやり取りを含めて判断されます。

退職日を明確にしたいときは、書類名だけ変えるのではなく、「何月何日をもって退職する」という意思と日付を明確にすることが重要です。

参考:厚生労働省「退職、解雇、雇止めなど」

提出後に撤回できるとは限らない

合意退職の申込みは、会社の権限ある人が承諾する前なら原則として撤回できます。ただし、信義則に反する場合など例外もあります。一方、辞職の通知が会社に到達した後は、原則として自分の判断だけでは取り消せません。

「待遇を改善してほしいから、とりあえず退職願を出す」という使い方は避けたいところです。条件交渉と退職の意思表示は、分けて考えましょう。

参考:厚生労働省「辞職|裁判例」神奈川県弁護士会「退職届と退職願の違い」

退職願と退職届はどちらを、いつ出す?

最初に確認したいのは、会社の書式よりも自分の雇用契約の期間です。正社員・契約社員・パートという呼び方だけで判断せず、労働条件通知書や雇用契約書を確認してください。

期間の定めがない契約は、原則として申入れから2週間

無期労働契約では、民法627条1項により、原則として退職の申入れから2週間の経過で雇用が終了します。会社の許可がなければ、いつまでも辞められないという仕組みではありません。

ただし、郵送する場合に「発送した日から2週間」と考えるのは避けてください。退職意思が会社へ到達した時点を踏まえ、日程を考える必要があります。

参考:神奈川県弁護士会「退職届と退職願の違い」e-Gov法令検索「民法」第97条・第627条

就業規則の「1か月前」なども確認する

円滑に進められる状況なら、社内の申出期限を確認し、引き継ぎの時間を確保しましょう。ただし、社内規定を理由に退職を無期限に先延ばしできるわけではありません。希望日と規定が衝突し、話が進まない場合は、雇用契約書と就業規則を手元に置いて労働相談窓口へ相談してください。

期間の定めがある契約は「2週間で辞められる」と一律に考えない

有期労働契約の途中で辞める場合は、会社との合意や、民法628条の「やむを得ない事由」などを確認します。無期契約と同じ説明を、そのまま当てはめることはできません。

また、契約期間が1年を超える一定の有期契約では、その契約の初日から1年経過後、申出により退職できる特例があります。ただし、一定の事業完了までの契約や、労働基準法14条1項1号・2号に該当する高度専門職・満60歳以上の人の契約などには適用除外があります。

「1年契約を更新して通算1年以上働いた」ことだけで、この特例が使えるとは限りません。契約の始期・終期・更新内容を確認しましょう。

参考:東京労働局「有期労働契約の途中での退職について」(PDF)

退職願と退職届を、必ず両方出す必要はない

2種類を順番に提出することが法律上の必須手続きではありません。会社との話し合いや指定書式に応じて選びます。

今の状況進め方の目安
退職日を相談して決めたい口頭などで意向を伝え、必要に応じて退職願を提出する
すでに退職日で合意している合意内容を記録し、指定された書類を提出する
意思は固いが、会社が認めない契約期間・通知内容・到達の記録を確認し、必要なら相談のうえ退職届で意思を明確にする

会社が指定する書類を使う場合も、退職日・理由・同意事項を読んでから署名してください。「指定書式だから」と内容を確認せず提出するのは避けましょう。

退職を伝えてから提出までの4ステップ

話し合いができる職場なら、次の順番で整理すると進めやすくなります。上司がハラスメントの当事者である場合は、無理に1対1で話す必要はありません。

  1. 契約と社内手続きを確認する。契約期間、申出期限、指定書式、提出先、有給休暇の残日数を調べます。
  2. 退職日と最終出勤日の案を分けて考える。引き継ぎ、有給休暇、次の会社の入社日を並べます。
  3. 担当者へ退職意思を伝える。相談段階なのか、意思が固まっているのかを曖昧にしないようにします。
  4. 書類を提出し、控えと記録を残す。日付・相手・返答を記録し、合意した内容もメールなどで確認します。

伝え方の例|退職意思が固まっている場合

「退職の意思が固まりました。○月○日をもって退職いたします。引き継ぎと最終出勤日について、確認のお時間をいただけますか」

これは一般的な会話例です。指定する退職日は、契約条件と必要な予告期間を確認したうえで決めてください。

退職日と最終出勤日は同じとは限らない

退職日は雇用関係が終わる日、最終出勤日は最後に実際の勤務をする日です。有給休暇などを取ってから退職する場合、この2つは異なります。

たとえば、月末退職で、その前の所定労働日に有給休暇を取るなら、最終出勤日は月末より前になります。退職届には、最後に出社する日ではなく退職日を書きます。

有給休暇を取って退職する場合、最終出勤日と退職日は異なる
有給休暇を取って退職する場合、最終出勤日と退職日は異なる

有給休暇は残日数と取得予定日を確認して申請しましょう。会社の時季変更権も、退職日を越えて行使することはできません。引き継ぎ日程は早めに共有しておくと、認識のずれを減らせます。

参考:大阪労働局「年次有給休暇について」

退職願・退職届の書き方と文例

会社の指定書式がある場合は、まず内容を確認します。指定がなければ、誰が・どの会社に・いつ退職する意思を伝えるのかが分かるように作成しましょう。

退職願の文例|合意を求める場合

退職願

株式会社○○
代表取締役 ○○ ○○ 殿

提出日:令和○年○月○日
所属:○○部○○課
氏名:○○ ○○

このたび、一身上の都合により、令和○年○月○日をもって退職いたしたく、お願い申し上げます。

退職届の文例|退職意思を通知する場合

退職届

株式会社○○
代表取締役 ○○ ○○ 殿

提出日:令和○年○月○日
所属:○○部○○課
氏名:○○ ○○

このたび、一身上の都合により、令和○年○月○日をもって退職いたします。

どちらも自己都合で退職する場合の一般的な文例です。宛名は会社の正式名称と代表者名を確認し、提出先の担当者と区別してください。押印などの社内手続きも、指定書式で確認します。

ハラスメント・退職勧奨などがある場合は、そのまま転用しない

会社から辞めるよう求められている場合や、ハラスメントなどが退職の原因の場合は、「一身上の都合」と書く前に相談しましょう。退職理由をめぐる食い違いを防ぐため、実際の経緯を整理しておくことが大切です。

元記事のPDF記入例も利用できる

紙の配置を確認したい方は、既存のPDF記入例を参考にしてください。どちらも「一身上の都合」とする例なので、上記の注意点を確認したうえで利用しましょう。

退職届を受け取ってもらえないときの対応

「忙しいから後にして」「後任が見つかるまで認めない」と言われると、退職の話を切り出すこと自体が負担になります。その場で言い争うより、伝える相手と記録の残し方を整理しましょう。

直属の上司で止まるなら、人事や別の責任者へ

上司が受け取らない場合や、上司本人がハラスメントの当事者である場合は、人事・労務担当、さらに上の責任者などへ連絡する方法があります。社内相談窓口が退職手続きの担当部署とは限らないため、正式な提出先も確認してください。

  • 提出しようとした日時と、相手の氏名を記録する。
  • 提出書類の写し、メール本文、会社からの返答を保存する。
  • 退職意思と希望する連絡方法を、落ち着いた文面で伝える。

強い引き止めが怖くて行動できない場合は、ブラック企業を辞めたいのに怖いときの準備と伝え方も、気持ちと手順を整理する参考にしてください。

郵送では「送った内容」と「配達の事実」を分けて残す

郵送する場合、内容証明は、いつ・誰から誰へ・どのような文書を差し出したかを証明する仕組みです。内容証明だけで、配達された事実まで証明するわけではありません。

サービス証明するもの
内容証明差出日、差出人・宛先、文書の内容
配達証明郵便物を配達した事実

内容と配達の両方を記録したい場合は、内容証明に配達証明を付ける方法を検討します。なお、配達証明は実際の受取人が誰かを証明するものではありません。

参考:日本郵便「内容証明」「配達証明」

退職の通知では、書類の控え、会社との連絡記録、郵送した内容と配達の記録を残す
退職の通知では、書類の控え、会社との連絡記録、郵送した内容と配達の記録を残す

郵送すれば、あらゆる問題が解決するわけではありません

受取拒否や宛先の誤りがある場合、意思表示の到達が争いになることがあります。返送された封筒や追跡記録も保存し、「送ったから大丈夫」と自己判断せず相談してください。

退職の妨害や嫌がらせは、厚生労働省の総合労働相談コーナーで相談できます。損害賠償請求や退職日の争いなど、個別の法的判断が必要な場合は弁護士への相談も検討しましょう。

ハラスメントが理由なら、退職理由と生活の準備も確認する

元記事で伝えたかったのは、会社の都合のために心身を壊すまで我慢しなくてよい、ということです。その考えは今も変わりません。ただし、「退職届を出せば即日で辞められる」「すぐ失業給付を受け取れる」とは一律にいえません。

退職理由は、事実を説明できるよう記録しておく

ハラスメントが原因で離職した場合、事情によっては雇用保険の特定受給資格者に該当することがあります。ただし、退職届の書き方だけで認定されるものではありません。

離職理由はハローワークが事実関係を確認して判定します。離職票の理由が実際と違う場合は、そのままにせず相談してください。

  • いつ、どこで、誰から、どのような言動を受けたか。
  • 会社へ相談した日と、その後の対応。
  • 関連するメール・メッセージ、手元にある診療記録など。

記録は具体的な事実を中心にまとめ、相談先に必要な資料を確認しましょう。

参考:ハローワーク「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲」「雇用保険の具体的な手続き」

体調が悪いときは、退職の決断を一人で急がない

心身の不調が続く場合は、医療機関への相談や休養を優先してください。有給休暇や会社の休職制度なども確認し、退職以外の方法で職場から距離を置けるか整理しましょう。

働けない状態では、雇用保険の基本手当をすぐ受けられるとは限りません

基本手当は、就職する意思と能力があることなどが要件です。病気などですぐ働けない場合は、受給期間延長の対象となることがあるため、ハローワークへ確認してください。「退職した翌月から給付が入る」前提で生活費を組まないようにしましょう。

参考:ハローワーク「基本手当について」

40代の退職は「書類を出す前の準備」が支えになる

私は約8年間勤めた会社と、その後約13年間勤めた会社で、合計20年以上のブラック企業勤務を経験しました。40代での転職では、書類の違いを知ることに加えて、収入と次の働き方をどうつなぐかが重要だと感じています。

筆者の体験|在職中に動き、無職期間を作らず転職した

私の場合は、在職中に転職活動を進め、2026年2月末まで前職で働き、3月から新しい会社へ入社しました。仕事と活動の時間をやりくりする大変さはありましたが、収入があることで、焦らず会社を比較できたと感じています。

今振り返ると、退職する前に選択肢を持てたことは大きかったと思います。ただし、これは私の場合です。心身の状態や職場の事情によっては、休養や職場から離れることを先に考える必要があります。

退職前の準備は、難しく考えすぎなくても構いません。まずは次の3つを、手元のメモに書き出してください。

  • 次の仕事:転職するなら、内定だけでなく労働条件と入社日を確認する。
  • 生活費:収入が途切れる期間の支出に、税金・健康保険・年金の負担も含める。
  • 仕事の整理:担当案件、引き継ぐ資料、返却する会社の物を一覧にする。

在職中の進め方は、働きながら転職活動を進める7つの準備で詳しくまとめています。退職を申し出る時期自体に迷っている方は、40代の転職タイミングを考える判断基準も参考にしてください。

まだ辞める予定がなくても、職務経歴書を更新し、他社の求人条件を確認しておけば、状況が変わったときに動きやすくなります。準備を始めることと、退職届を出すことは別です。

退職願と退職届についてよくある質問

会社員でも「辞表」と書いてよいですか?

一般的な会社員の退職手続きでは、「退職願」「退職届」を使うと意図が伝わりやすくなります。「辞表」は役員の辞任などでも使われるため、会社の指定書式を確認しましょう。名称より、誰がどの立場で何を申し出るのかが重要です。

退職届はパソコンで作成してもよいですか?

一般にはパソコンで作成できます。手書きかどうかより、退職意思・退職日・本人からの通知であることが明確になっているかが大切です。会社に指定書式がある場合は確認し、提出前にコピーやPDFを残しておきましょう。

退職届を出した後、引き継ぎが終わらなければ辞められませんか?

引き継ぎが終わらないことだけで、適法な退職が無期限に止まるわけではありません。ただし、在職中は可能な範囲で担当案件・期限・資料の保管場所を整理し、対応できない業務も上司へ伝えておきましょう。損害賠償を示唆された場合などは、具体的な事情を専門家に相談してください。

会社から退職願を書くように言われました。従う必要がありますか?

退職勧奨は、会社から退職を勧めることです。退職に同意していないなら、その場で書類を出す必要はありません。自分から辞める意思があるのかを整理し、納得できない場合は総合労働相談コーナーなどへ相談してください。

参考:厚生労働省「労働契約の終了に関するルール」

まとめ|契約・退職日・伝えた記録を確認しよう

退職願と退職届は、使う目的が異なります。ただ、書類の名前を選ぶだけでは退職の準備は終わりません。まず確認したいのは、自分の契約と、無理のない退職日程です。

書類を出す前に、まず行う3つのこと

  1. 雇用契約書と就業規則を確認する。
  2. 退職日・最終出勤日・生活の見通しを整理する。
  3. 退職意思を明確に伝え、控えとやり取りを残す。

会社への配慮は大切ですが、退職の話し合いを一人で抱え込む必要はありません。話が進まないときは、事実と記録を持って外部へ相談する。その選択肢も用意しながら、自分の次の働き方を考えていきましょう。

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