会社で長く働いていると、正式な役職以上に職場へ大きな影響力を持っている人に出会うことがあります。
僕はこのブログで、そんな人物を分かりやすく「職場の女帝」、その周囲を固める取り巻きを「近衛兵」、さらに女帝と現場の間を取り持つ中心人物を「近衛兵長」と呼んでいます。
もちろん、女帝や近衛兵長という言葉は正式な法律用語や心理学用語ではありません。また、同じ構造は女性だけでなく男性中心の職場でも起こります。
今回取り上げたいのは、そんな職場で意外に大きな転換点になる、
「近衛兵長が会社を辞めたとき」
です。
僕がこれまで働いてきた職場でも、人間関係の中心にいた人が退職した途端、それまで何とか保たれていた職場のバランスが大きく変化する場面を見てきました。
ただし、ここで勘違いしてはいけません。
近衛兵長が辞めたから会社がおかしくなるわけではありません。
もともと一人の人間に調整、情報伝達、感情の受け止め、現場との橋渡しなどを依存していた組織の弱点が、その人の退職によって一気に表面化するのです。
この記事では、僕自身の20年以上の会社員経験をもとに、女帝を支えていた近衛兵長が退職したあとに起こりやすい変化と、自分が「次の兵長」にされないための対処法を解説します。
結論|兵長の退職で会社が壊れるのではなく、もともとの弱点が表面化する
最初に結論を言います。
近衛兵長が辞めたことで職場が混乱するなら、その会社にはもともと問題があります。
正常な組織であれば、一人の社員が退職しても、業務の引き継ぎを行い、別の人が役割を引き継げるようになっています。
ところが女帝と近衛兵によって人間関係が形成されている職場では、正式な組織図とは別の「裏の組織図」が存在することがあります。
例えば、表向きの指示系統は、
部長 → 課長 → 一般社員
となっている。
ところが実際には、
女帝 → 近衛兵長 → 近衛兵・一般社員
という別のルートで仕事が動いている。
こうした状態では、近衛兵長が退職した瞬間に、それまで見えていなかった問題が一気に噴き出します。
中小企業庁の「2025年版中小企業白書」でも、業務が特定の従業員に属人化している場合、その従業員の退職などによってノウハウの喪失や業務停滞につながるリスクが指摘されています。
つまり問題は、
「兵長が辞めたこと」ではなく、「兵長がいなければ回らない職場を会社が放置していたこと」
なのです。
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近衛兵長が退職したあとに起こりやすい5つの変化

僕が実際の会社員生活で見てきた経験からすると、こうした職場では調整役がいなくなったあと、いくつかの変化が起こります。
もちろん、すべての職場で同じことが起きるわけではありません。
しかし、もともと一人の社員に人間関係や業務調整が依存していた会社ほど注意が必要です。
1.女帝と現場の間にあった「緩衝材」がなくなる
近衛兵長は、単なる取り巻きではない場合があります。
毎日のように女帝の話を聞き、愚痴を受け止め、機嫌を読み、現場との間を調整する。
女帝が、
「なんでこんなこともできないの?」
と言ったとしても、
兵長が、
「○○さんはこういう意味で言っていると思うので、今回はこうしましょう」
と現場へ柔らかく伝えていた。
僕が見てきた職場にも、こういう人物がいました。
本人が意識していたかどうかは別として、事実上の「緩衝材」になっていたわけです。
その人物が退職すると、今までワンクッション置かれていた言葉や感情が、そのまま一般社員へ届くようになることがあります。
今まで、
「意外と女帝さんってそんなに怖くないよね」
と思っていた人が、
「兵長さんが全部受け止めていたのか……」
と初めて気づくこともあります。
2.指示や意思決定が迷走し始める
もう一つ大きいのが、業務上の調整機能です。
近衛兵長が女帝の考え方を理解している場合、
「女帝さんはこう言っているけど、実務的にはこう進めよう」
と現実的な形へ変換していた可能性があります。
ところが、その役割を担う人がいなくなる。
すると、
「昨日決めたことが今日変わった」
「Aと言われたから進めたら、なぜBにしなかったのかと言われた」
「誰に確認すれば最終決定なのか分からない」
といった問題が増えてきます。
これは単なる「女帝の性格」の問題だけではありません。
意思決定のルールが仕組み化されず、一部の人間関係に依存していたこと自体が問題なのです。
近衛兵長の退職は、その問題を表面化させるきっかけになります。
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3.今まで兵長がやっていた調整業務が一般社員へ降ってくる
これが現場社員にとって一番厄介かもしれません。
兵長がいなくなったからといって、その人が行っていた仕事まで消えるわけではありません。
誰かがやらなければならない。
女帝への報告。
関係部署との調整。
不満の聞き役。
会議前の根回し。
女帝の意図を読み取って現場へ伝える作業。
それまで一人が抱えていた「見えない仕事」が、残された社員へ分散されます。
ここで怖いのが、正式な業務として引き継がれないケースです。
「○○さん、女帝さんと話しやすそうだから聞いておいて」
「ちょっと機嫌悪そうだから確認してきて」
こうして少しずつ役割を押し付けられます。
気づいたときには、自分が新しい兵長になっていた。
これが一番避けたいパターンです。
4.残った近衛兵の間で「次の中心人物」が決まり始める
女帝を中心とした人間関係そのものが残っている場合、兵長が辞めても派閥が消滅するとは限りません。
むしろ次の中心人物を必要とします。
僕が見てきた経験では、この役割は必ずしも仕事が一番できる人へ回るわけではありませんでした。
女帝の話を長時間聞ける。
頼まれると断れない。
その場の雰囲気を悪くしたくない。
相手へ強くNOと言えない。
こうした人へ負担が集まりやすいケースがあります。
特に注意したいのが、兵長が辞めた直後に急に女帝との距離が近くなることです。
以前までそれほど話しかけられなかったのに、急に相談される。
ランチに誘われる。
社内の人間関係について意見を聞かれる。
他の社員について、
「○○さんのこと、どう思う?」
と探りを入れられる。
もちろん、すべてが「次の兵長候補」という意味ではありません。
ただし、人間関係の情報収集役や感情の受け止め役まで求められるようになったら、少し距離を意識した方がいいでしょう。
5.職場に見切りをつける社員が出始める
近衛兵長がいなくなり、指示が混乱し、社員同士の関係まで悪化すると、
「この会社、この先大丈夫なのかな」
と考える社員が出てきます。
ここで旧記事では「優秀な人材の静かなる退職」と表現していましたが、「静かな退職」は一般的には会社を辞めず、必要最低限の仕事にとどめる働き方を指す言葉として使われます。
今回扱っているのは、実際に会社を辞める話です。
そのため、ここでは「職場に見切りをつけた社員が辞め始める」とした方が実態に合っています。
人間関係が退職につながること自体も珍しいことではありません。
厚生労働省の「令和6年雇用動向調査」では、2024年に転職した女性が前職を辞めた理由として、「職場の人間関係が好ましくなかった」が11.7%となっています。さらに男性40~44歳では16.0%でした。
もちろん、この数字が女帝やお局の存在を直接示しているわけではありません。
しかし、職場の人間関係が実際の退職理由の一つになっていることは、公的な調査からも確認できます。
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僕が思う「兵長」の本当の正体
ここがこの記事で一番伝えたいところです。
僕は近衛兵長を、
「問題を作った人ではなく、問題のある組織を何とか動かしていた人」
だと考えることがあります。
一見すると、
「女帝の腰巾着」
「いつも女帝と一緒にいる人」
に見える。
しかし、その人物がいなくなった途端、
指示が通らない。
情報共有が止まる。
女帝と現場が直接ぶつかる。
他部署との調整まで止まる。
そんなことが起きるなら、実はその人が相当な負担を背負っていた可能性があります。
だから僕は、兵長を単純な悪役として見るだけでは、この問題の本質を見失うと思っています。
女帝と一緒に他人を攻撃したり、排除したりする行為まで正当化するつもりはありません。
ただ、
一人の社員が女帝の感情処理から業務調整まで背負わなければ会社が回らない。
こちらの方が、会社としては深刻な問題です。
兵長が辞めたことで会社が壊れたのではありません。
今まで兵長が一人で隠していた組織の弱さが、退職をきっかけに見えるようになった。
僕はそう考えています。
「次の近衛兵長」にされないための5つの対処法
ここからは、実際に自分を守る話です。
もし近衛兵長が退職し、自分へ女帝との調整役が回ってきそうになったら、「何でも引き受ける人」にならないことが重要です。
第一に、業務と感情のケアを分けること。 仕事上必要な報告や相談には対応しても、毎日の愚痴や社員の悪口まで聞く必要はありません。
第二に、重要な指示は記録へ残すこと。 「昨日と言っていることが違う」という職場ほど、メールや社内チャットで確認した方が安全です。「念のため確認ですが、○○で進めます」と残しておくだけでも違います。
第三に、派閥の情報収集役にならないこと。 「○○さんって最近どう?」「あの人何か言ってなかった?」と聞かれても、必要以上に他人の情報を渡さない方が安全です。
第四に、業務へ支障が出る行為は事実として記録すること。 厚生労働省もハラスメント相談をする際には、日時、場所、何を言われたか、誰から言われたか、誰が見ていたかなどを整理しておくことを案内しています。
第五に、会社が問題を改善するかを見ること。 一人の社員が辞めたあと、会社が業務を整理し、責任者を決め、情報共有を仕組み化するなら改善の可能性があります。一方、何も改善せず、新しい「兵長」を一人作って同じ構造を繰り返すなら、根本的な問題は残ったままです。
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兵長退職後に「この会社は危ない」と感じる兆候

僕なら、一人が辞めたこと自体よりも、その後の会社の対応を見ます。
注意したいのは、「誰が辞めたか」ではありません。
その人がいなくても会社として仕事を回せるのか。
ここです。
会議で決めた内容が頻繁に覆る。必要な情報が特定の人しか知らない。退職した社員が担当していた仕事を誰も把握していない。残った社員へ業務が集中する。女帝の機嫌を取ることが実質的な仕事になる。問題を指摘した社員の方が悪者にされる。そして、一人辞めたあとに別の社員まで辞め始める。
こうした状態が複数重なっているなら、
「兵長がいなくなったから大変なんだ」
だけで片付けない方がいいでしょう。
それは、会社の組織そのものに問題があるサインかもしれません。
無視・仲間外し・嫌がらせまで始まったら別問題
兵長の退職後に派閥争いが激しくなり、特定社員への無視や嫌がらせなどが始まった場合は、「女帝シリーズの職場あるある」だけで済ませる話ではありません。
厚生労働省が2026年7月に公表した令和7年度の「個別労働紛争解決制度の施行状況」では、民事上の個別労働関係紛争における「いじめ・嫌がらせ」の相談は55,614件で、14年連続最多となっています。
社内の相談窓口へ相談しても対応してもらえない場合などには、全国の総合労働相談コーナーという外部の相談先もあります。解雇、配置転換、いじめ・嫌がらせ、パワハラなど幅広い労働問題を無料で相談できます。
「女帝が嫌い」という感情ではなく、
「いつ、どこで、誰から、何をされたのか」
を事実として整理しておくことが重要です。
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まとめ|兵長が辞めたあとの会社を見ると組織の本当の姿が分かる

女帝と近衛兵長がいる職場では、近衛兵長が退職することで職場の空気が大きく変わることがあります。
しかし、本当に見るべきなのは、
「兵長が辞めたこと」ではありません。
その人がいなくなったあと、
会社は仕事を正常に引き継げたのか。
指示系統を整理できたのか。
特定の社員へ負担を集中させていないか。
人間関係の問題を放置していないか。
ここを見ることが大切です。
もし一人の社員が辞めただけで仕事も人間関係も大混乱するなら、その会社は以前から一人の人間へ依存していた可能性があります。
そして、自分が次の兵長候補になったとしても、何でも背負う必要はありません。
仕事上必要なことはする。
でも、女帝の機嫌取りや感情の処理まで自分の仕事にしない。
その境界線はしっかり持っておいた方がいいと、20年以上会社員をやってきた僕は思います。
そして会社が何も変わらず、同じ構造を何度も繰り返しているなら、
「この会社にこの先も居続けて大丈夫なのか」
を冷静に考えるタイミングかもしれません。
職場は人生のすべてではありません。
女帝のために働いているわけでも、近衛兵長になるために会社へ入ったわけでもありません。
職場が多少おかしくても、自分まで一緒に壊れる必要はない。
状況をよく見て、巻き込まれない距離を取りながら、しぶとく会社員生活を生き抜いていきましょう。
人生、まだまだこれからだわ!
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